自律神経③
神経系は早いスピード、ホルモン系は少し遅いが全身に影響
身体は様々なシステムをうまく使いながら効率よく、外の環境に適応しようとします。
自律神経でいうと、まずストレスに対して神経系が反応し、次にホルモン系が反応します。それらが対応してもまだ続くようなストレスの場合構造を変化させてしまいます。
これを順を追ってお話しします。
神経系というのは電気信号ですので非常に早いスピードで情報を伝えることができます。
危険やストレスを感じたときに瞬間的に筋肉への血流を多くするために、心拍数をあげ血管を収縮させ、血圧を上げます。
消化に関わる機能は今必要ないので内臓の動きは抑制されます。びっくりした時にお腹がキューとなったりドキドキするのはこの働きのせいです。
刺激に対して瞬間で反応します。
そしてその刺激が継続的に加わると、血管内にホルモンが放出されます。
特に副腎という腎臓の上にある臓器(副腎の中心部の髄質から)からアドレナリンやノルアドレナリンといった交感神経と同じような働きをするホルモンが放出されます。
参照:プロメテウス解剖学アトラスより
血液の流れは神経系よりも遅いため、スピードはありませんが、全身の器官に働き神経系よりも持続時間が長いため、神経系が働いた後に放出されます。
副腎からは他にも違うホルモンが放出されますが、これはまた別の機会にお話しいたします。これも自律神経と密接な関係にあるので切っても切れないお話です。
さて、神経系が働いた後、副腎が働いてホルモンが放出されました。それでも長期にわたってストレスが続く場合私たちの身体はその刺激に対して適応しようとしていきます。
長期のストレスによってフェーズが変わる
それをフェーズに分けて説明したのが、ストレスという言葉を初めて用いた、カナダの生理学者ハンス・セリエ(1907~1982)です。セリエはストレスを受けたときに身体がその刺激に適応しようとする生体の反応を全身性順応症候群(もしくは全身適応反応症候群)と名づけました。
大きく分けて3つの段階からなり、警告反応期、抵抗期、枯渇期に分類されます。
警告反応期:身体がストレスに対してはじめに反応する段階です。全身に防御機構を誘発させる反応で交感神経が活性化し副腎はホルモンを生産し続けます。
抵抗期:継続的なストレスにさらされている状態で、警告反応期から身体が長期的な順応を準備する段階です。ストレスと身体の抵抗のバランスが拮抗している状態です。副腎は肥大しストレスに抵抗するための需要を満たそうとします。
枯渇期:ストレスが持続すると抵抗のためのエネルギーを消耗しているので次第に拮抗バランスが崩れてきます。そしてエネルギーが枯渇し、副腎は枯渇し、免疫系の臓器が萎縮し、免疫バランスが崩れていきます。慢性的な健康障害、長期的な栄養素の欠乏、精神問題を示します。
このように長期にわたってストレスにさらされると、内側からのエネルギーが枯渇することによってストレスに負けてしまうのです。そうすると、健康な時ならば問題のない程度のストレスが、枯渇期では重大なストレスとなってしまうのです。そうなると負のスパイラルでどんどん悪くなってしまうということになっていきます。
戦国時代に籠城して戦っているような状態ですね。副交感神経も働きが悪くなっているので回復に充てる時間もないのでどんどん追い込まれている状態です。
枯渇期になってしまうと回復にはかなり時間がかかってしまいます。運動や施術でさえストレスとなってしまう可能性がありますので、慎重に焦らず進めていくことが重要になります。
ですので、自律神経が乱れているというと交感神経が優位な状態と考え、興奮しているような状態を考えてしまいますが、枯渇期までいくと無気力といった感じになってきます。血圧も下がって、朝起きられない、仕事に行けなくて休職しなければならないという方も多くいます。 興奮している状態はまだエネルギーがある状態ですのでその時点で手を打てば早めに回復することができます。
自律神経系で無気力になるもう1つの理論を次回はお話ししていきます。